ハノイのはちへお。

from Hanoi, Vietnam

まだまだバラガンツアー。

メキシコ日記はまだまだ続きます…だって2週間の日程のうち、まだ2日目の、それも午前中の話しかまだしてないからね!


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さて、トラルパン礼拝堂を辞して、今度は世界遺産である、バラガン邸へ向かいます。…が、トラルパンが良すぎて、私、バラガン邸の印象があまり残ってない!

やはり昔、ブラウン管(時代だな…)越しに見たあの家を、直にこの目で見れたのは良かったんだけど、何というか、邸宅というよりミュージアムなんですよ。

実は、このバラガン邸から、違うルートのツアーに参加していた日本人建築デザイナーの方と合流したんですけど、バラガン邸のあとにヒラルディ邸(こちらは現在、一般の方の住居になっています)も行くんですが、彼が言っていたのが「バラガン邸とヒラルディ邸の両方を訪れて感じることは、やはり『家とは人が住んでなんぼ』ってこと」だと。どれだけ色使いが美しくて、素晴らしいフォルムの家具を置いていたとしても、「住人」のいない限り、やはり家はただの箱でしかないのだと。


しかしだからと言って、バラガン邸が訪れる価値のない場所かというと、もちろんそんなことはありません。緑と光に溢れた中庭、開放感のある書斎やリビングルーム、居心地のいいダイニングなど、そこが美しい場所であることに変わりはありません。

ここでは、バラガン邸の随所に見られる、「バラガンいい人エピソード」を2、3書いておこうと思います。

・バラガンはこの「バラガン邸」に移り住む前に、この邸宅のすぐ隣の家に住んでいた。この旧宅(現「オルテガ邸」)を売却し、改めて自邸を建てることになった際、旧宅の庭をこよなく愛していたバラガンは、「新しい自宅に、この家の庭が見える窓を作ってもいいか」と買主に聞いた。買主は快く承諾、バラガンはこの旧宅の庭を臨める部屋を1室、新宅に作った。そしてその部屋は、なんとゲストルームとして使われていた!
自分の気に入りの景色を友人に味わってもらおうという心遣い!素晴らしい!

・バラガン邸には2つのゲストルームがあり、1つは前出のオルテガ邸の庭が見える部屋。こちらは親しい友人用の部屋だったのに対し、残りの1つは「それほど親しくない人用」。こちらのゲストルームには、ベッドの枕元に幼子イエスを抱くマリアの絵がかかっているのだが、ベッドの横幅に対し、中央より左寄りに掛けられている。そうすることで、マリアの目線がベッドで眠るゲストに注がれるようにした。敬虔なクリスチャンだったバラガンならではの心遣い。

・設計の際は「降り注ぐ光」を重要視したバラガン。自邸のリビングは壁一面が窓になっており、カーテンがついてはいるものの、このカーテンも窓の半分ぐらいの高さしかない。さて、実はこのリビングには、窓の外側にもロールカーテンがついている。これは、カーテンのない窓の上半分から洩れるリビングの光に誘われてやってきた鳥が、窓ガラスにぶつかって死んでしまったのを悲しんだバラガンが、二度とこんなことがないように、と後から設置したもの。



やさしい!!バラガン優しい!!!


バラガンは友人が多かったそうですが、そりゃそうだろう…


ちなみに、私が一番好きだった部屋は、2つあるダイニングルームの内の1つ、バラガンが朝食用に使用した、彼専用の小さなダイニングルーム。ここは空気がトラルパン礼拝堂に少し似ていました。ものすごい安心感。



さて、そのバラガン専用のダイニングに連日通い詰めた男がいました。それがヒラルディ氏。
彼はバラガンの建築に心酔しており、どうにか自分の住む家の設計をお願いできないか、とバラガンのもとを日参しておりました。
しかし、バラガンの返事は「ノー」。なぜなら、ヒラルディの所有する土地があまりにも狭かったから。
それでもヒラルディはめげず、2年間に渡り「そこを何とか」とお願いし続け、とうとうバラガンが根負けして彼の家を設計するに至ります。
これが、バラガン建築の中でも彼の集大成にして最高傑作と誉れ高く、同時に最後の作品ともなった、「ヒラルディ邸」です。

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ちょっと画像のアップロードが上手くいかないので、こんな写真しか上げられませんが、こちらのヒラルディ邸、2階部分の外壁がすでに鮮やかなピンク!ちなみにバラガンの使用したピンクは、彼の愛したブーゲンビリアのピンクです。
さらに、今まで見てきたバラガン建築の床には溶岩が使用されていたのに対し、こちらはフローリング。これはヒラルディの故郷に自生する木を使用したもの。

この家の、黄色い渡り廊下とプールのあるリビングを隔てる扉を、自分の手で開けた瞬間のあの感動は、一生忘れないと思います。


こちらのお宅、現在はヒラルディさんではない家族が住んでいらっしゃいます。壁の色など、ちょっとでも褪せてくれば、業者を読んで塗りなおしているということで、いつまでも完成当時の鮮やかさが楽しめます!おすすめ!


私が行ったときはブーゲンビリアが満開の時期でしたが、この家にはハカランダ(ジャカランダ)の樹が植えてあり、こちらは4、5月に行くととても美しく咲く、とのこと。
トラルパン礼拝堂の十字架の影も4、5月に行けば見れる、とのことだったし、バラガン建築を巡るなら、ベストシーズンはそのあたり、ということですね。もしまた行く機会ができたら、そのときは4月に行きたいなあ。


最後に、バラガン建築を巡る際の諸注意を。
まず、どれも事前予約が必要です。さらに、今回お世話になったガイドさん曰く、「まあメキシコ人なので」すぐに返事がもらえるとは限らないので、早めの予約が肝心です。
また、個人の邸宅に関しては、住人が不在の場合は見学ができません。特にバカンスの時期には見学できないことが多いそうなので、避けた方が無難かもしれません。

今回私はツアーを利用しましたが、上記の理由により、HPで紹介している通りのルートをすべて周れないことも珍しくないそうです。なので、「全部見れたらラッキー」ぐらいの余裕を心に持ってお出かけください。