半旗
13日午前、将軍のご遺体は国立葬儀場からノイバイ空港に送られ、空路で故郷・クアンビン省に送られました。
Vietnam buries national hero Vo Nguyen Giap(BBC,英語)
将軍を載せた車は我が家の近くを通ったのですが、何せ我ら夫婦、日曜は9時半まで寝てるのがデフォルトで、午前9時ごろ通過したご遺体に手を合わせることはできませんでした。テレビも見なかったし。
Facebookで昔の学生が「VTVの中継はクソだった、VOVの中継は素晴らしかった」と書いていたのですが、原因は1台の軍用車。爆弾などの遠隔操作を妨害するために用意された車が、放送局の中継車が発する電波をことごとく妨害したために、VTVを含むいくつかの放送局は中継を行うことができず、唯一日頃から交通情報を出しているVOVのみが、自局で管理している交通監視カメラから受信した映像を発信することができたんだとか。このカメラと、一般のテレビ用中継車ではネットワークの仕様が違うんだって。
無事ノイバイに着いたご遺体は、ベトナム航空のATR 72機でクアンビン省のドンホイ空港に移送されたわけですが、これには夫が「政府専用機とかないのかよ!」とツッコミ。確かに。
さて、この2日間、恐る恐る市内中心部まで出てみれば、あまりにもすべてがいつも通りで、本当に英雄の死なんてあったのか、疑わしいぐらいでした。
相変わらず天気は良くて、風も穏やか。
今日の午後には水上人形劇も上演再開してた…っておい!!
そうそう、あの火事で燃えた階段部分は、ガラスをはめてショーケースのようにして人形を飾ってありました。テウさんは相変わらず、公然なんちゃら罪にひっかかりそうなビジュアル。次に電気がショートして火事が起こったら、真っ先に燃えるのはテウさん。最近演目が変わって、テウさんが出てこなくなったらしいですね。肩たたきか…
(※テウさんとは、以前水上人形劇で開演の音頭をとっていたおっさん人形のことです)
12日、街はあまりにもいつも通りで、何だかクラクラしてしまいました。あれーおかしいなー。
でも、唐突に、こうやって、赤と黒が目に入るんですよ。
黒い帯に縛られた赤い旗は、秋の気持ちの良い日差しの中で風に乗ることもせず、何に喜ぶこともなく、ただひたすらに頭を垂れていて、それでようやく、ああ確かにこの街は、国は、人は、悲しいのだと、インクが紙に滲むような感触で実感しました。
今日も今日とてテレビはクアンビンで行われた埋葬式の様子を中継していて、サンダル売りやらパイナップル売りが商品を路上にほっぽり出して、その辺のお店のテレビに見入ってたりね。…いやちょっと待て、商品から目を離すなよ!バスに乗れば、ラジオはひたすらヴォー・グエン・ザップ。Facebookでベトナム人がアップするのもヴォー・グエン・ザップ。ついでに私のブログのアクセス解析をしても、ザップ・ザップ・ザップ。
確かに英雄は亡くなって、母なる故郷で永遠に眠ることになり、この2013年の10月は「歴史」に加えられたのでした。
きっと近い内に、偉大なる英雄の名を冠した「Vo Nguyen Giap通り」が地図に乗ることになりますよ。計画自体はすでにあるそうです。季節の花に溢れた、人々に愛される道になったらいいなと思います。
金星紅旗の半旗なんて、きっともう二度と見ることはないだろうなあ…観光客向けのノン笠に混じって売られてる半旗はちょっとした衝撃だった。
どれだけの涙が流れたことか。将軍が送られていくところなんて、やっぱり見なくて良かった。そんな大勢の人が悲しんでる空気の中で、涙の海に飲まれることなく、まっすぐ立っていられた自信なんてないわ。