ハノイのはちへお。

from Hanoi, Vietnam

天使の街。

バンコク2日目は、一旦空港へ行って荷物を一時預かり所に持って行ったあと、City Lineでパヤタイへ向かいました。


このCity Lineで私の向かいに座ったお姉さん2人組がとても印象的でした。

1人は、たぶんまだ20代半ばぐらいの若い人で、色白で、真っ黒な髪を後ろにまとめています。綺麗な目をした、丸顔の可愛らしい人でした。少しくたびれた白シャツと黒のパンツという、非常にシンプルで清潔感のあるいでたちが、彼女にとても似合っていました。

もう1人は30代半ばか40代前半ぐらいの、あごの細い、こちらもきれいな女性で、クリーム色のトップスと、緑のチェックのスカートという組み合わせが、東南アジアでは新鮮な感じ。iPhoneで何かしらを見つけて、笑いながらもう一人の女性に話しかけている、その明るい笑顔がとても素敵で、しかし電車が走りだしてすぐパソコンを開くと、とてもクールな表情になり、その対比が私の興味を引きました。笑ったときの細い目と、今浮かべている眉間のしわが、同一人物のものだとは俄かに信じ難かったのでした。

おそらく二人は上司と部下の関係で、若い女性はまだ色々勉強中なのか、余裕のない感じ。始終硬い表情でした。


まるで今から何かドラマでも始まるんじゃないかと思わせられるほどに、二人は朝の電車の中で、とても美しく、まぶしかった。



パヤタイ駅に着き、大勢が電車を降りた中で、彼女たちははぐれてしまった。
駅のホームでせわしなく、右に左に、上司を探す若い女性。そんな彼女の様子に、私は目を離すことができない。彼女は本当に魅力的なのでした。ただそこに立って、人を探しているだけなのに、彼女のいるそこだけが、独立した空気をもって、浮かび上がっているかのようでした。


その後、BTSのパヤタイ駅でもやはり上司を探す彼女を見ました。上司はまだ見つかっていない様子。結局彼女は改札を通り、中に入って行きました。


その後、それほど間をおかず、上司風の女性が、やはり若い女性を探しているんだろう、右に左に、頭を傾けながらBTSの駅にやってきました。電話と券売機を往復する彼女の眼。


そこへ、いつの間にか若い女性が改札へ戻って来ていて、上司風の女性の名を呼びました。一回。気付かない。二回、三回。そこで上司が振り向いて、二人はお互いの姿を認め合った。
そのときの二人の笑顔の美しさを、どう表現すればいいのだろう。

そう、まるでそこにだけ、柔らかい色をした、大輪の花が咲いたようでした。


色の黒い警備員も、大声で何事かを喋っては笑っている若い女たちも、券売機に不慣れな外国人も、もたつく彼らにイライラする地元民も、すべてが彼女たちから切り離されて、やっぱりそこにだけ、全く別の世界ができてしまったようでした。
熱を帯び始めた朝の光の中で、満面の笑みを浮かべながらホームへと向かう彼女たちは、まるで映画のポスターのように、強い印象を私に残して去って行きました。


彼女たちはどんな生活をしているんだろう。あまりにも二人がきらきらと輝いていたからなのか何なのか、自然と、何か新しいことを始めたいという気持ちが芽生えました。



バンコクは、別名「天使の街」。間違いなく、天使は日常に紛れ込んでいるようでした。