バスのお釣りと車掌さん。
バスを生活の足とした場合、自ずと乗る路線が決まってきます。
ハノイのバスは車掌と運転手がおり、車掌に運賃を払って切符を買うシステム。同じ路線をずっと使っていると、この車掌や運転手も、知っている顔との遭遇率が高くなる。
私は以前、よく9番に乗っていました。カウザイに住んでいる今は49番のヘビーユーザーになりましたが、それでもまだ月に3,4回は9番に乗ります。そしてどういうわけか、やたら遭遇率の高い、若い車掌がいる。9番に乗ると、大体30%の確率でそのお兄さんがいる。
そのお兄さんはまあまあ「イケメン寄り」と呼んでいい顔立ちで、多分年の頃は20代半ばから30ぐらい。これがまあ愛想のない人で、何度か客に対してきつい物言いをしているのを見たこともありました。客の顔も見ずに返事するんだよーちょっと怖いんだよー。
さて今日の夜、旧市街から家の方まで帰るのに、9番バスに乗ったところ、そのお兄さんがいました。ほんとによく会うわねえ。
席に座り、バスが走りだして、お兄さんが料金の回収に来た。小銭が欲しかった私は、「2人です」と言って5万ドンを差し出す。
しかし!
お釣りが返ってこなかった!
可能性は3つ。お釣りがないから小銭が溜まってから返しに来る/ついうっかり/意図的に返さない、さあどれだ。
このお兄さん、一度料金を回収したら基本的に運転席の傍から動かない人で、時間も時間だったもので車内も混み合っており、お兄さんは後ろの方の座席に座る私からかなり遠い。物理的にも精神的にも、私はお兄さんに「お釣りください」ということができず、そこからリウザイ通りに出るまで「これは…どうしたもんか」「でも私もラッシュ時の激混みバスでお金を払わずに降りちゃったことあるしな、借りを返したと思えば…いや4万ドンはでかいよ」「てか私、ほんとに5万ドン渡した?1万ドン渡したってことない?」「向こうが『5万ドン払った?ほんとか?』って聞いてきても、証拠がない…」と悶々、悶々としておりました。私、ベトナム語できるっちゃできるけど、小心者なんです。
結局私たちが降りるバス停が近づき、降車口まで出たところで、たまたまお兄さんが近くに来たので、「あの、さっき5万ドン渡したので、お釣り4万ドンもらえますか…?」と恐る恐る聞いてみた。
そしたら、笑った。
笑った!何この人、客に向かって笑えるんだ!!って思わずびっくりするぐらいのいい笑顔!!いやほんとびっくり、いつもの仏頂面何なのあれ!
「え、お釣りかえしてなかったっけ?まじかー、あーごめん、混んでる時ってついうっかり忘れるときあるんだよね、4万ドンね」って4万ドン普通に返してくれた!
「いやーなんか言いづらくて」と言ったら、「ええー、何で?」だって。
ものすごい安堵感に包まれて、バスを降りました。いやーほんと、あの人あんな顔して笑うのねー。
いや、まあ、お釣りが返ってこなかったら車掌に言って返してもらうって、当たり前のことなんだけど、車掌ってとっつきにくい人多いから、中々言えないんですよね(小心者だから)。
お釣りは基本的にきちんと返ってくるけど、車掌によってはほんとに小銭を全く持ってなくって、一言「他の客が乗車賃払ってお釣り分溜まるまで待って」ってきちんと言う人もいれば、こっちから何か言うまでお金も返さず、黙ってる人まで様々。
まだバス代が3千ドンだった時代、お釣りが返ってこなくて、1千ドンのために主張すべきかどうか、ものすごく悩んだこともあったなあ…。
5月から市内のバス運賃が値上げされるわけですが、またお釣りの有無で悩みそう。私はいつも、車掌の持っている小銭の束を見て、出すお札を決めています。もちろん予め小銭を用意しておくのは大切なので、小銭ゲットのため、スーパーで買い物するときは千ドン単位の細かいお金は出さないんだけど、そうすると「小銭がなくってー」とか言って飴やガムが3個も4個も出てきたりして、こんなはずじゃなかった感に悩まされることも、多々。ガム7個でバスは走ってくれないのに、消費者はガムでごまかされるこの現状、いつまで続くのかなー。
定期買えってか。でも定期買って元取れるほどには、バス、乗らないんだよなー。